東に奥羽山脈が走り、西にはこれと並行して出羽三山、朝日連峰がつらなり、県南には吾妻山系があり、ここを源とする最上川は、東西の山々の間をぬって県内を縦断、その豊かな水は米沢、山形、新庄の各盆地を潤して日本海に注いでいます。
大宅壮一は山形県人を「野暮で誠実」と評しましたが、昔から進取の気風があり、原料米が自給出来、酒造期になると雪が降って無菌状態になるうえ、水が豊かで昔から酒造りがたやすかった事もあって、山形県産酒の発展におおいに貢献があったことがうかがわれます。
加えてこの県は自県の酒消費量が極めて大きく、それゆえに雪国特有の頑固さと進取の気風がミックスされて、信念を持った酒造りをしている個性的な蔵元が多いのも特徴であります。「麓井」は、この山形県の米どころ庄内平野の北西、鳥海山麓にある小さな蔵元であり、冬場の清浄な空気と鳥海山麓の清澄な伏流水にも恵まれて、品質こそ絶対本位とする酒造りにはげんでおります。創業は明治27年。蒸し米から搾りまで一貫して手造りを貫く酒蔵で、その醸された酒がいかに高品質であるかは、昔から定評のあるところでもあります。特に高品質酒については、いまや山形県を代表する名酒中の名酒と、酒を口にした多くの愛酒家を、その旨さに唸らせつづけております。同蔵の生配純米酒は燗してよし、冷やでよしの出色酒であり、生配純米吟醸「圓・まどか」は玄人受けする特別限定酒。大吟醸酒も爽やかでフルーティな香りと、キレのよさは申し分のない見事な出来で、ともに近年の大人気商品であります。今後の同蔵の飛躍と人気は、どれほどまでに登りつめていくものかと、品不足になることを懸念して大いに気になるところでも御座います。春の全国新酒鑑評会(国税庁醸造試験所主催)に於ける近年の成績では、昭和62年金賞を受賞の後、平成2年以降は本年で5回連続金賞受賞を果たし、平成5年秋には仙台国税局局(東北6県)鑑評回に於いて、吟醸酒の部で首席第一位・国税局長賞受賞を果たすなど、東北屈指の名醸蔵なる事を内外に立証しています。 |